IR担当の仕事とは?広報PRや財務との違いは?

この記事では、IR担当の仕事とは何か、IR担当になって最初に知っておくべき業務についてまとめました。

IRとは何か

IRとは、Investor Relations(インベスター・リレーションズ)の略で、企業が株主や投資家向けに経営状態や財務状況、業績の実績・今後の見通しなどを広報するための活動を指します。

IRの始まりは1953年、当時の米国では第二次世界大戦が終わり、個人投資家のマネーが株主市場に大きく流れ込みました。米国の主要企業は、個人投資家とどのようなコミュニケーションをとればいいのかといった課題に直面しました。

その時、発明家エジソンが創設した、ゼネラル・エレクトリックの会長である、ラルフ・コーディナーが広報部に「どうすれば、投資家優れた意思疎通を図れるかを検討しなさい」と指示を出したことが、IRの始まりと言われています。

それから、IRは米国から日本にも伝わり、1993年にIR活動の普及と質の向上を目指して活動する、日本で唯一の民間の非営利団体「日本IR協議会」が設立されました。現在の米国では、IR担当=稼ぎ頭と言われるほど、IR担当の社内での地位は高く、企業において重要なポジションを担っています。

一方日本でも、ここ20年でIR活動がどんどん浸透しています。企業のIRに対する考えに基づき、IR専任部門、経営企画部門、財務部門、広報部門、総務部門など様々な部門にIR機能があります。最近では、コーポレートコミュニケーション部という部門も増えており、ESG対応も併せて主観しているケースもあります。

今後、IR活動はもっと認識されるようなり、IR担当の活躍も高まっていくことが予想されています。

IR担当のやりがいは?

IR担当の仕事は、幅広い知識や、社内・社外との円滑なコミュニケーション能力が必要になるため、決して簡単な仕事ではありません。だからこそ、他の職種では得ることのできない、やりがいや達成感があります。

IR担当は、株主や投資家向けに、経営や財務の状況などの投資判断の材料を提供しなければなりません。そのため、IR担当は、常に会社の経営に近いところで仕事をすることができます。株主や投資家に向けて発信するIR担当の言葉は、企業のトップと同じでなければなりません。いわば、 IR担当は企業トップの代弁役なのです。

つまり、経営陣とコミュニケーションをとりながら、企業のビジョンを話したり、共有することができます。そのため、一般の社員であれば、なかなか近づくことができない経営者や、最前線で執行に携わる役員などと、密に関わることができるのは貴重な経験です。

またIR担当は、機関投資家など外部との関わる場面もたくさんあります。株主や投資家にもさまざまな職種や経歴の人や、その道で成功し大きな資金を得ている人と接する機会もあります。そのため日頃から、さまざまな意見を聞くことができます。

IRの仕事に就いていなければ、こうした人脈を得ることはなかなかできないでしょう。仕事を通して人脈が広がることで、考え方や視野も広げることができるので、自分自身の成長にもつながります。

IR担当の仕事は大変?

先ほども書いた通り、IR担当は一般の社員では経験できないことがや、大きなやりがいを得ることができますが、誰でもできるような簡単な仕事ではありません。

IR担当には、定期的に繁忙期が発生します。最も忙しい時期は、四半期ごとに訪れる決算後の開示作業や、決算説明会の資料作成などの準備する時期です。決算発表後は、機関投資家との個別面談もあり、本決算と上期決算後は件数も多いでしょう。そのため、こういったイベントの前後は、連日残業が続く可能性もあります。

また、IR担当は、企業の代表として株主や投資家へ説明をしなければならないため、自社の経営軍や株主・投資家の両方からプレッシャーを感じることが多い仕事です。時には、自社と株主との間に立って、板ばさみのような状態になってしまうこともあるでしょう。このようなプレッシャーや緊張感は、IR担当の仕事とは切っても切り離せないものです。

そして、IR担当には幅広い知識が必要になります。財務や会計面はもちろんですが、自社の労務、生産、流通、販売などの分野の知識も必要です。それに加え、株式市場、自社の株価の動き、競合他社の動向にも目を配り理解していなくてはなりません。そのため、IR担当は日々勉強と、努力し続ける覚悟が必要です。

広報PRや財務との違いは?

IRと広報PRの違いについてですが、広報PRは社会一般に対して、商品やサービスの、販売促進、企業のイメージアップを目的としています。一方、IRは株主・投資家などに対して、投資判断に関係する企業情報を、発信する活動です。

このように、IRの対象は機関投資家が多く情報も一般の人に難しい財務内容などでしたが、近年、個人投資家の増大により内容も一般的なものが多くなり、広報と活動内容が近くなってきている面もあります。実際に、日本の上場企業では、IR担当が広報部門に在籍していたり、広報PRと兼任でやっている企業も少なくありません。

また、財務とIRでは役割が大きく違いますが、財務部では有価証券報告書など、IRに関する資料を作成することがあります。そのため、担当していた人がIRに携わりたいと希望することも少なくありません。財務担当者は、数値や市場の仕組みに強いため、企業が財務経験者をIR担当に求めている場合もあります。

IR担当の仕事 ①決算説明会の運営と資料作成

IR担当の1つ目の仕事は、決算説明会の運営と資料作成です。

多くの上場企業は、第2四半期決算と第4四半期決算に2回、アナリストや機関投資家向けに決算説明会を実施します。所要時間としては、1時間〜1時間30分です。決算説明会は、外部に対して発表するイベントのため、経営陣もものすごく力を入れます。
決算説明会では、当該期の決算状況の報告、当該期のトピックや中長期計画の達成状況、今後の経営戦略について説明を行います。当日の決算説明会で、どのようなシナリオで話すのか、そしてどのように表現するのかは、IR担当に手腕が問われます。

基本的な決算説明会の流れは、このようになります。

開会の辞
出席者の紹介
トップによる総括
決算の説明
通期見通し
質疑応答

また、決算説明会に合わせて説明会用の資料を作成します。決算短信(詳細は後述)などの法定開示に作成する資料もありますが、極力恣意性を排除して記載をしているため、無味乾燥な報告書になる傾向にあります。そのため、説明会用の資料作成が必要になります。

説明会用の資料は、単に結果をまとめるのではなく、株主や投資家が自社に何を求めているのかを事前にしっかりと調査し、その答えを盛り込むことが重要になります。

IR担当の仕事 ②開示資料の作成

IR担当の2つ目の仕事は、開示資料の作成です。開示資料は、四半期ごとに開示するものと、都度開示するものと2種類あります。四半期ごとに開示しなければならない資料が、有価証券報告書と決算短信です。

有価証券報告書とは、金融商品取引法によって、上場企業が作成しなければならない開示資料です。各事業年度が終了した3ヶ月以内に「EDINET」という金融庁の電子開示・提出システムを通して提出する義務があります。有価証券報告書の内容は、会社概要・事業内容・営業状況・経営成績、対処すべき課題・事業のリスク・研究開発活動、経営成績およびキャッシュフローの状況・財務諸表などです。

決算短信とは、四半期ごとに東証のTDnet(Timely Disclosure network:タイムリーディスクロージャーネットワーク)にアップロードされるもので、上場企業は決算日から45日以内の開示が、取引所から要請されています。

決算短信は、サマリー情報と添付資料の種類で構成されます。サマリー情報とは、速報性が求められる事項をいい、トップページには経営成績、財政状態、配当の状況、年度末の業績予想などの決算内容の記載をします。

決算短信、有価証券報告の作成において、IR担当は定性情報の記入を担当します。数値の部分については、経理部門が担当して作成する企業が多いです。

次に、都度開示するものを、適時開示といいます。適時開示とは、証券取引所の規則に基づいて、上場企業が投資家に対して開示する情報のことです。一見、法律に基づく有価証券報告書の方が、適時開示よりも重要そうに感じるかもしれません。

しかし、必ずしもそうとは限りません。なぜなら、上場会社の重要情報が最初に世の中に示されるのが適時開示であり、それにより株価が変動しているからです。つまり、適時開示は株主や投資家にとって必須の情報であり、投資家の投資判断に与える影響は、適時開示の方がずっと大きいのです。

適時開示は、IR担当が全体を作成する企業がほとんどです。年々、日英同時開示を行っている企業も増えており、その場合は自社での翻訳をする企業と、外部業者へ依頼をしてチェックする企業とどちらもあります。

IR担当の仕事 ③機関投資家との面談

IR担当の3つ目の仕事は、機関投資家との面談です。決算発表後、機関投資家と個別に面談を行います。この面談のことを、1on1ミーティングとも言います。IR担当は、機関投資家から申し込まれた面談に対して、日程を調整して対話を行います。面談は、スピーカーが社長やCFOが行うケースもあれば、IR責任者や担当者が行うケースもあり、企業によって役割は異なります。どちらにせよ、面談での対話がその後の売買にも影響するため、非常に重要な仕事です。

IR担当しての仕事は、常に日頃から行う準備と会う投資家ごとにすべき準備が必要になります。投資家ごとにすべき事前準備は、その投資家がどのような運用方針なのか、どのような投資スタイルなのか、どのような点に関心があるか、最近の保有状況の変化などの情報収集です。

情報収集については、アポイントをアレンジしてもらった証券会社に、投資家のプロファイルを事前にもらう場合もあります。あるいは、IR支援会社から公開情報を集めた投資家のデータベースを用いて投資家プロファイルや日々変化する保有情報を入手することも可能です。そういったものを活用して、事前に機関投資家を理解するようにしなければなりません。

また、面談当日は必ず、機関投資家と話した内容を記録に残し、何が問われて、その理由は何かを、きちんと理解する必要があります。機関投資家にも好みや癖があり、そこに大きなギャップがあると円滑にコミュニケーションとれない場合もあります。面談を通し、いかに自社と投資家の間の相互理解を深めることが重要です。

IR担当の仕事 ④問い合わせ対応、IRサイトの更新

IR担当の4つ目の仕事は、問い合わせ対応や、Rサイトの更新です。これらの仕事は、IR担当の日常業務として発生するものです。IRサイトに関しては、株主や投資家にとって、情報をタイムリーに確認することができるため利便性が高く、IRサイトの重要度は年々高まっています。

更新する上でのポイントは、下記の内容を最新の情報にしておくことです。

【企業への理解を促進する情報】

・事業内容、経営ビジョン、経営戦略、経営者からのメッセージ
・投資意欲を促進する情報
・優待商品や優待サービスなどの株主優待情報、株主還元の具体的な方針や姿勢
・過去の業績財務情報の整備
・有価証券報告書、決算短信などの法定・適時開示資料と株主通信、決算説明会資料、月次KPIなどのIR資料

株主や投資家が知りたい情報への到達の容易さや、情報の一貫性が必要なため、IRサイトマップの整備も大切です。IRサイトは、どんな株主や投資家にも公平にIR情報を提供できる貴重なツールです。そのため、さまざまな株主や投資家が求めている情報が網羅されていなければなりません。常にタイムリーな情報を更新することがIR担当に求められます。

また、日々投資家や株主からの問い合わせに対応することも、IR担当の仕事です。特に、個人投資家の場合、企業のIR担当に直接会って質問することは、会社説明会や株主総会などのイベントがあるとき以外は難しいため、電話で問い合わせをしてくることも少なくありません。

IR担当の仕事 ⑤統合報告書の作成

IR担当の5つ目の仕事は、統合報告書の作成です。統合報告とは、企業の中長期的な価値創造の戦略・方針を説明するレポートのことで、株主・投資家を対象にした、企業の将来の方向性をまとめた要約版ともいえます。

従来の、財務情報のみのアニュアルレポートでは情報提供が不十分とされ、ESG投資が注目されたことで、統合報告書の発行が求められるようになりました。そのため、統合報告書は、ESG(環境・社会・ガバナンス)を含めて、全社を取りまとめて報告書を作成します。

統合報告書に掲載する内容は、大きく2つに分かれます。1つは定量的な「財務情報」、2つ目は、定性的なものを中心とする「非財務情報」です。そして、これらの情報に企業データを加えたものが、統合報告書の主な内容になります。

統合報告書には、中長期でいかに企業価値を向上させていくのかを、財務情報と非財務情報を統合させる形で、株主や、投資家に理解してもらう必要があります。そのため、IR担当には分かりやすく、簡潔に作成することが求められます。

IR担当の仕事⑥経営陣への株主・投資家見解のフィードバック

IR担当の6つ目の仕事は、経営陣への株主・投資家見解のフィードバックです。 IR担当は、日頃から株主や投資家との目的を持った対話を積極的に行います。そして、経営戦略や事業計画への理解を得ながら、意見や要望を聞き出します。

聞き出した意見や要望は優先順位をつけて、迅速に経営陣にフィードバックするよう努めなければなりません。時には、株主や投資家から厳しい意見が飛んでくることもあります。その結果、IR担当は経営陣と株主・投資家との板挟みになり苦労することもあります。

しかし、経営陣はIR担当のフィードバックを聞き、投資家が望む情報の発信、投資家ニーズ把握による適切な経営判断をしていきますので、 IR担当の役目は重要です。

まとめ

ここまで、IR担当者が最初に知っておくべき、IR担当の仕事について解説をしてきました。

株主や投資家と信頼関係を維持していくことは、経営において欠かせない戦略です。そのため、株主や投資家に情報を提供する、IR担当の仕事は、非常に重要なポジションです。