IRの仕事に必要な知識は?生かせる職務経験や資格は?

この記事では、IRの仕事に必要な知識や、活かせる職務経験、資格についてまとめました。

IRの主な仕事内容は?

まず、IR担当の主な仕事内容は、下記6つがあります。

1 決算説明会の運営と資料作成
2 開示資料の作成
3 機関投資家との面談
4 経営陣への株主・投資家見解のフィードバック
5 問い合わせ対応、IRサイトの更新
6 統合報告書の作成

1つ目の仕事は、決算説明会運営と資料作成です。多くの上場企業は、第2四半期決算と第4四半期決算に2回、アナリストや機関投資家向けに決算説明会を実施します。決算説明会は、外部に対してのイベントのため、多くの企業の経営陣が力を入れている1つです。当日の決算説明会では、投資家や株主に対して、どんなシナリオをするのか、IR担当に手腕が問われます。

また、決算説明会用の資料は、株主や投資家が自社に何を求めているのかを、事前にしっかりと調査し、その答えを盛り込んだ資料を作成する必要があります。

2つ目の仕事は、開示資料の作成です。開示資料には、四半期ごとに開示するもの(決算短信、有価証券報告書)と、都度開示するもの(適時開示)の2種類あります。決算短信、有価証券報告書の作成では、IR担当は定性情報の記入を担当し、適時開示では、 IR担当は全体の作成を担当するケースが多いです。

3つ目の仕事は、機関投資家との面談です。この面談は、1on1ミーティングとも言われており、その後の売買にも影響する非常に重要な仕事です。

IR担当は、機関投資家との日程調整を行い、当日までに面談する機関投資家がどのような運用方針か、どのような投資スタイルなのか、事前調査を行います。当日の面談は、話者(スピーカー)を社長(CEO)やCFOが行うケースもあれば、IR責任者や担当者が行うケースもあります。

4つ目の仕事は、経営陣への株主・投資家見解のフィードバックです。 IR担当は、株主や投資家との目的を持った対話を積極的に行い、経営戦略や事業計画への理解を得ながら、意見や要望を聞き出します。そして得た情報を、経営陣に適時にフィードバックするよう努めなければなりません。

5つ目の仕事は、日々の業務として発生する、問い合わせ対応とIRサイトの更新です。IRサイトに関しては、情報をタイムリーに確認することが出来るため、株主や投資家にとっても利便性が高く、年々重要度が高まっています。

6つ目の仕事は、統合報告書の作成です。従来の、財務情報のみのアニュアルレポートでは情報提供が不十分とされ、ESG投資が注目されていることもあり、ESG含めた報告書を作成する企業が増えています。

統合報告書は、中長期でいかに企業価値を向上させていくのかを、財務情報と非財務情報を統合させる形で、株主や、投資家に理解してもらう必要があります。そのため、IR担当には分かりやすく、簡潔に作成することが求められます。

IRに必要な知識①自社のことを詳しく知っていること

IR担当者として、まず一番必要な知識が、自社についてです。

商品・サービス、ビジネスモデルについてはもちろん、会社の歴史や企業トップのパーソナリティなどの、自社について様々な理解を深める必要があります。投資家や株主は常に、数ある企業の中から投資先を検討するために情報収集をしています。

そして、「この企業は将来成長するだろう」という判断材料を手に入れた時、その企業を投資先として選びます。そして、その判断材料を提供するのが、IR担当の役割です。そのため、自社の商品やサービスだけでなく、自社の歴史や企業のトップのパーソナリティ、ビジネスモデルなど、全てにおいて深く理解をすることが求めれられます。

とくに、自社の歴史については、投資家や株主など外部からは理解しにくい傾向があります。そのため、最初のIR取材の際には、自社の歴史について質問をされることも多いです。質問された時に、IT担当は、分かりやすく伝えることで、相手に理解を深めることができます。

また、企業のトップのパーソナリティについては、企業のトップの思いや、どんな部署を経験してきたのかについても、知っておくことが重要です。ここで大切なことは、IR担当者が投資家や株主に向けた言葉は、企業のトップと同じ言葉でなければなりません。つまり、IR担当は、企業トップの代弁者なのです。そのために、IR担当は日頃から経営陣と、自社のビジョンについて話し合い、共有しなければなりません。

IR担当が投資家や株主に向けて行う情報発信は、投資先にする判断材料になります。しかし、間違った情報や曖昧な情報を、投資家や株主に発信してしまえば、投資先として辞める理由にもなってしまうのです。つまり、IR担当が自社について詳しく理解しておくことは、一番必要なことなのです。

IRに必要な知識②財務経理の知識

次にIR担当者に必要な知識が、財務経理の知識です。

先ほど、IR担当の仕事内容で、機関投資家との面談について記述しましたが、面談の際、機関投資家は、財務分析を駆使して企業に対して質問をしてきます。その時に、IR担当は、即座に経営や財務の状況などの必要な情報を提供し、機関投資家が求めている数字を、適切に説明しなければなりません。

そのため、IR担当は商品・サービスの情報だけではなく、自社の経営や財務内容を理解しておくことが必要になります。

また、投資家や株主に対して、「自社はどこまで成長してきたのか」「これからどう成長してのか」などの、自社の成長を説明する時には、具体的な数字で明確に示す必要があります。具体的な数字で表現することは、IR活動をする上で、簡潔に定量的に表現する最も最適な手段でもあります。

日本の企業によっては、会社の数値を扱っている財務部や、経理部がIR担当を兼務していることも少なくありません。

IRに必要な知識③ビジネスレベルの英語

次にIR担当者に必要な知識が、ビジネスレベルの英語力です。とくに、IR担当には、英語で会話をする能力が求められます。

機関投資家は、国内だけではなく、海外にも多くの機関投資家が存在します。そのため、海外投資家とのやり取りや、日英同時開示など、英語が必要なシーンは多くあります。その際、ほとんどの海外の機関投資家は英語を活用します。そのため、ビジネスレベルの英語力が必要になります。

実際には、IR取材の場合は通訳が付いているケースが多いです。しかし、通訳を通して会話するよりも、通訳を通さずに直性機関投資家とコミュニケーションをとれた方がいいことは間違いありません。IR担当の言葉で直接伝えることが出来るだけでなく、通訳を使わないことは、IR取材の時間を短縮することができ、効率的だからです。

例えば、米国の機関投資家は、欧州に比べて比較的保有する銘柄の数は少ないことが多く、一銘柄の投資額が相対的に多い傾向にあります。できる限り大きな運用成果を狙っているため、銘柄を選ぶ際には徹底的な調査・分析を行い、納得しない限り株式は保有しません。

そのため、かなり深掘りした質問や、厳しい質問をしてくる場合があります。その時に、通訳を使い対話するよりも、直接コミュニケーションがとれた方が、熱意や誠意が伝わりやすく、 IR担当におっとては大きな武器になります。

しかし、実際には日本の企業のIR担当は、ビジネスレベルの英語力を有している人が、あまりいません。ですから、あなたがビジネスレベルの英語力を有していれば、この先IR担当としては、大きなアドバンテージになるでしょう。

IRに必要な知識④会社法の知識

次にIR担当者に必要な知識が、会社法の知識です。

IR担当が株主総会を運営をする企業は全体で20~30%程度です。最近では、IRとSRを一緒の部門にする企業が増えているため、株主総会の運営に関する知識も持っていることも武器になります。

株主総会の運営では、招集通知作成から議決権行使までの知識が必要になります。IR担当としての日常の活動も、もちろんですが、株主総会は株主と直接対話することができる貴重な場面です。

株主総会では、より多くの必要な情報をわかりやすく、株主に開示することで、企業と株主の信頼関係を構築することができます。そのためにも、IR担当は株主総会が円滑に運営できるよう、一連の流れや会社法を理解した上で、株主総会を運営しなければなりません。

株主総会を運営するには「毎事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない」「計算書類は定時株主総会の承認を受けなければならない」「取締役は事業報告の内容を定時株主総会に報告しなければならない」といった様々な決まりが定められています。

また、株主総会は、決算日(基準日)から3カ月以内に開催しなければならず、短期間に多くの事務手続きが必要となるため、IR担当はスケジュール管理が重要になります。

例えば、3月31日が年度決算日(基準日)で、6月30日に株主総会を開催する企業の、開催準備スケジュールはおおむね以下のようになります。

開催準備スケジュール

4月 1日 決算整理開始
4月15日 株券名義書換完了
5月 3日 決算書類を監査役と会計監査人に提出
5月31日 会計監査人が監査報告書を監査役と取締役会に提出
6月 7日 監査役が監査報告書を取締役会に提出
6月15日 株主総会招集通知書の発送
6月23日 計算書類、附属証明書、監査報告書を本社に据え置く
6月30日 株主総会開催
7月 1日 株主名簿書換再開

株主総会で、IR活動を積極的に行うことによって、企業と株主・投資家は信頼関係を構築しすることができます。そのためにも、IR担当は当日無事に株主総会が開催されるよう、準備をしなければなりません。

IRの仕事に生かせる職務経験は?

IR担当になるためには、必要な資格や免許は必要ありません。だからといって、誰でもすぐに活躍できるようなポジションもありません。

実際には、IR担当は社会経験を積んだ人がキャリアアップして就くことがほとんどです。多くの企業では、IR業務に携わったことがある人や、自社の経営方針や企業理念を正しく理解している人材を、 IR担当として採用しているケースが多いです。

例えば、その1つが財務経理の経験です。IRには財務・会計の分析力が欠かせないため、財務や経理の経験や知識が必要になります。

財務担当者は、財務とIRでは役割が大きく違いますが、数値や市場の仕組みに強く、また財務部では有価証券報告書など、IRに関する資料作成を担当していることがあります。そのため、企業側が財務経験者を求めていることはよくあります。

また、証券会社やIR支援会社での経験も、IR担当の仕事に活かすことができます。

とくに証券会社の営業部門のは、機関投資家と企業側を繋ぐ窓口をしています。そのため、機関投資家と企業側の両方の視点を理解しています。また、機関投資家の取材ミーティングのアレンジを行なっている場合もあるので、これらの経験をIR担当に活かすことができるでよう。

そして、IR支援企業については、機関投資家向けの国内外の訪問取材対応のアレンジや、総合報告書の作成、コーポレートサイトの管理などを経験している人が多く、実際にIRの業務を経験しているので、IR担当としてその経験を活かすことができるでしょう。

また、 IR支援会社は、会社によって得意な分野や業界があります。そのため、自身の経験とマッチした企業のIR担当に転職することが出来れば、即戦力として活躍できる可能性もあります。

IRの仕事に生かせる資格は?

第6章にも記述した通り、IR担当には必須になる資格や免許はありません。また、特別な学歴が求められる職種でもありません。 どちらかといえば、これまでの経験やコミュニケーション能力、数値などの分析力が求められる職種です。

しかしIR担当は、投資家や株主に対して情報提供を発信する役割のため、日々のIR活動を実践する上で必要な知識やスキルがあります。また、そのような知識やスキルは、これからIRに転職しようとしている人にとっては、アピールポイントになります。

例えば、TOEIC(=Test of English for International Communication)です。TOEICとは、ご存知の通り英語によるコミュニケーション能力を評価する世界共通のテストです。

第4章でも記述しましたが、機関投資家は海外にも多く存在するため、IR担当者にはビジネスレベルの英語力が求められるます。適時開示の際も、日英同時開示を行っている企業が増えています。その際の英文資料も外部業者へ依頼をしてチェックする企業もあれば、自社で翻訳をする企業もあります。

具体的には、TOEIC800点以上を有していることが望ましいでしょう。企業側も、TOEIC800点以上であれば、英文の文書を理解できるレベルと判断することができます。実際企業によっては、IR担当の採用条件にTOEICの点数を定めている場合もあります。

まとめ

ここまで、IRの仕事に必要な知識や、生かせる職務経験、資格について解説をしてきました。

IR担当には資格や免許は必要ありませんが、幅広い知識や正しい知識を理解することで、 IR活動の結果は大きく変わっていきます。IRを担当する人の力量によって株価が左右されるといっても過言ではない、重要な職種です。

今後、日本では今まで以上にIR担当の需要が高まっていくでしょう。日本も、米国のようにIRを出世頭に位置づける企業が多くなっていけば、IR担当としてキャリアアップだけでなく、収入UPも期待できる職種です。