【5分でわかる】書籍「適時開示実務入門」のポイント

この記事では、書籍「適時開示実務入門」を元に、適時開示の基本的な実務について解説していきます。

適時開示とはなにか

適時開示とは、証券取引所が投資家の投資判断に、影響を与える情報の開示を求めるものです。金融商品取引法などの法律によって義務付けられた情報開示(有価証券報告書や臨時報告書)ではなく、あくまで証券取引所の規則になります。

適時開示は、TDnet(Timely Disclosure network:適時開示情報伝達システム)を利用して行います。TDnetは、インターネット上で掲載・閲覧することが可能です。

また、適時開示で求められることは、以下の3つに分類されます。

・決算情報(決算情報や四半期決算情報)
・決定事実(会社が決定した重要事実)
・発生事実(会社に発生した重要事実)

これからが発生した場合、速やかにこれらに関する適時開示を行う必要があります。一見、法律で定められている情報開示の方が重要に思えるかもしれませんが、そういったわけではありません。

なぜなら、適時開示は投資家や株主に対して一番最初に行う情報開示になります。つまり、上場有価証券の価格形成に大きな影響を与えることになります。

ごくまれにですが適時開示が行われる前に情報が漏れてしまい、メディアを通して報道されてしまう場合があります。そのため、IR担当は情報を徹底管理し、そのような状態が発生しないように努めなければなりません。

また、企業が開示手続きを行い、公衆縦覧されるまでの流れは以下のようになります。

適時開示の具体的な作成方法

ここでは、実際に適時開示を行う際の開示方法について解説をしていきます。まず、決定事実と発生事実についての開示は、下記のようなビジネス上の文書と同じような形式になります。

・タイトル

「Aに関するお知らせ」の部分には、決定事実や発生事実の名称を記載します。
名称の例:「主要株主の異動に関するお知らせ」

・主文の記載

Bの部分に、主文を記載します。決定事実の場合は「当社は、○○年○月○日開催の取締役会においてAに関して下記のとおり決議しました」となります。発生事実の場合は、「下記のとおりAが発生しましたので、お知らせいたします」もしくは、「下記のとおりAの発生が見込まれることになりましたのでお知らせいたします」となります。

・記書きの構成

決定事実の場合=①決定した理由、②決定した事実の内容、③業績への影響
発生事実の場合=①発生した経緯、②発生事実の内容、③業績への影響

決定事実については、決定した理由をどのように記載するかが重要です。記載内容により、投資家や株主からの評価を左右します。そのため、決定事実が会社の成長にプラスの影響を与えることを、投資家や株主に理解してもらう必要があります。

次に、決算情報の開示についてです。決算発表と、四半期決算発表の基本的な構成を、書籍「適時開示実務入門」では以下の通りにまとめています。

●決算発表の基本的な構成

●四半期決算発表の基本的な構成

決算短信と四半期決算発表は、いずれもサマリー情報と添付資料から構成されます。

基本的には、東証が提示しているサマリー情報の様式を使用します、しかし義務ではないため、自由な様式で開示することも可能です。ですが、自由な様式で開示をする場合は、投資家や株主から開示の後退と受け取られないように、注意して作成する必要があります。

また、添付資料の記載は、投資家や株主にとって有益な情報になるように、経営成績、財政成績、キャッシュ・フローの変動要因について記載をします。

【適時開示のポイント1】株主の発行、自己株主の処分

ここからは、具体的な決定事項や発生事項に関するポイントについて解説をします。まず、株主の発行、自己株主の処分が発生した場合についてです。

基本的に、株式の発行や自己株主の処分を行なった場合、投資家や株主はあまり良い印象を抱きません。なぜなら、株式の希薄化が生じるためです。

ですので、株主の発行や自己株主の処分が決定した場合には、きちんと調達した資金を何に投下するのか、そして会社の成長にどう繋がるのかを、投資家や株主に理解してもらう必要があります。

例えば、第三者割当による自己株主の処分の関する開示における、株式の希薄化の規模が合理的だとします。その場合は、公募による株式の発行や、自己株式の処分に関する開示においても、新たな株式と処分する株式の株が、発行済株式総数と比べてそれほど多くないのであれば、株主の希薄化が軽微であることを、下記のように記載します。

<例>

今回の自己株式処分数の発行済株式数に占める割合は、0.43%であるため、株式の希薄化学及び流通市場への影響は軽微であると判断しています。

また、もし短期的には株式の希薄化が生じてしまう場合でも、調達した資金の使途が適切であれば長期的には会社の成長、そして利益に繋がるはずです。その場合は、決定した理由を記載する中で調達した資金の投下が、どう会社の成長に繋がり、既存株主にとって利益になるのかを記載する必要があります。

また、第三者割当による株主の発行や自己株式の処分の開示を行う場合、必ず次の事項を記載することが定められています。

  1. 割当先の振込に要する財産の存在について確認した内容
  2. 振込金額の算定根拠およびその具体的な内容
    (取引所が必要と認める場合は、振込金額が割当先に特に有利でないことがに係る適法性に関する、監査役、監査党委員会または監査委員会の意見などを含む)

【適時開示のポイント2】株式の売り出しが決定

次に、株式の売り出しが決定した場合についてです。

通常、株式の売り出しは、会社の意思に基づいて発生するものではなく、売り出し人による個別の事情がほとんどです。しかし、その場合には個別の理由を書くわけにはいきませんので、決定した理由は下記のように記載します。

<例>
上記売り出しを実施することにいたしましたが、これは当社株主の分布状況の改善と流動性の向上を目的としたものであります。

上記のように、「分布状況の改善」や「流動性の向上」のためであると記載します。このように記載する理由は、株主の売り出しによって、株主構成は変わり流通する株式の株も増えるためです。

また、株主の分割を決定した場合にも「流動性」という表現を用いることができます。株主の売り出しの理由とは違い、株主の分割の場合は、まさに株式の流動性を向上させるからです。株主の分割の理由は下記のように記載します。

<例>
株式分割を実施することにより、当社株式の1投資単位あたりの金額を引き下げ、投資家の皆さまがより投資しやすい環境を整えるとともに、株式の流動性の向上を図ることを目的としています。

なお、株式の売り出しの場合も、株式を分割する場合も、株式の希薄化を記載する必要はありません。

【適時開示のポイント3】資本金・準備金が減少

次に、資本金・準備金が減少が決定した場合についてです。資本金・準備金については、株式の発行や自己株式の処分のように開示基準が定められていません。(株式の発行や自己株式の処分は、1億円以上の場合開示義務がある)

どんなに規模が小さいとしても、すべての開示が必要になります。ですので、「規模が小さいから、投資家の投資判断への影響が軽微だろう」と誤って開示不要と判断しないよう気をつけなければなりません。

資本金・準備金の減少が発生した理由としては、「機動的かつ柔軟な資本政策に備える」といった表現を使うことが多く、下記のような記載をします。

<例>
当社の期間損益の黒字化の定着を踏まえ、早期復配を目的に財務基盤の再構築を図るとともに、今後の機動的かつ柔軟な資本政策に備えることを目的とします。

【適時開示のポイント4】固定資産の譲渡・取得

次に、固定資産の譲渡、取得が発生した場合についてです。

固定資産の譲渡、取得は開示漏れが発生しやすい決定事実の1つです。経営成績や財政状態が悪い場合、固定資産や譲渡・取得の規模が小さく、投資家や株主にとって投資先を判断において、そこまで影響を与えないものでも、開示基準に該当し開示情報が必要なことがあるからです。

とくに、固定資産の取得は投資家や株主にとって、イメージしやすいものです。ですので、決定した際には、その投資が今後の会社の成長・利益にどのように繋がるのかを明確に記載する必要があります。

例えば、製造会社が新工場の建設を決定した場合、下記のように記載します。

<例>

現在、当社が東日本エリアで販売しているスープ製品(調理加工食品)は、東栃木工場(栃木県)及び○○社(当社100%子会社)を中心に関東地区で製造をしておりますが、各工場ともに生産能力に余力がない状態となっております。

今回建設する新工場は、関東地区でのスープ製品生産拠点を集約化し、生産能力の増強及び価格競争力の強化を図るとともに、新規製造設備の導入による品質及び味の一層の向上を目指すものであります。

また、固定資産を譲渡する場合には、通常利益を生み出さないものです。固定資産の譲渡が決定した理由の記載としては、それを所有し続けることは今後の会社の成長に繋げることはできないため、譲渡が適切であることを記載する必要があります。

<例>

当社は、××年より以下の土地と建物(リゾートホテル)を所有しておりましたが、季節営業(7月〜10月初旬)のため収益の改善が難しくなり、自社保有物件の見直しと資産効率改善を目的として、同ホテルがある富士山エリアで観光事業を展開している、○○社を売却先として固定資産を譲渡いたします。

決算情報・決算関連情報を開示する上のチェックポイント

決算短信と、四半期決算短信は定期的に開示が必要になります。IR担当は限られた期間の中で業務を進めなければなりません。そのため、記載内容に誤りがないように十分に注意する必要があります。

書籍「適時開示実務入門」では、下記のようにチェックポイントをまとめています。

・求められている資料を準備できているか

サマリー情報は最新の様式を用いているか
必要な添付資料を用意しているか

・開示資料に記載された情報は正確か

添付資料に記載された財務諸表・四半期財務諸表の数値は正確か
監査人による確認を受けたか
財務諸表・四半期財務諸表とサマリー情報が整合しているか
財務指標は正確か
定性的情報の中の定量的情報は正確か
定性的情報のなかのその他の情報は正確か

【適時開示のポイント5】決算情報の業績予想を修正

ここでは、決算情報・決算関連情報の適時開示におけるポイントについて解説をしていきます。まず、業績予想を修正する場合についてです。

決算短信のサマリー情報に業績予想を記載しますが、記載している内容に修正があった場合、開示が必要になります。しかし、開示が必要な条件は

・売上高の予想値については10%
・利益予想値については30%

このように、開示基準が定められています。

また、開示していた予想値と新たな予想値の間に基準以上の乖離が生じた時だけでなく、開示していた予想値と、その予想していた期の実績値との間に基準以上の乖離が発生した場合も開示が必要です。

また企業によっては、サマリー情報に業績予想を記載していない場合があります。しかし、記載していないからといって、開示しなくていいわけではありません。

記載していない企業については、新たに予想値を開示することとし、それと前期の実績値との間に、上記に記述した基準以上の乖離が発生した場合や、最後まで予想値を開示していないとしても、前期の実績値と当期の実績との間に、基準値以上の乖離があった場合は、開示が必要になるので、注意しなければなりません。

【適時開示のポイント6】決算情報の配当予想の修正

次に、配当予想の修正があった場合についてです。決算短信のサマリー情報には、来期の配当予想も記載しますが、この配当予想を修正する場合も、開示が必要になります。

また、配当予想の修正の場合は、業績予想のように開示基準は定められていません。つまり配当予想の修正については、新たな配当予想を算出した場合必ず開示が必要になります。

また、配当予想もサマリー情報に記載しない企業もあります。その場合も、配当予想の修正に関する開示は必要になりますので、注意しなければなりません。配当予想を新たに算出したのであれば、サマリー情報への記載有無に限らず開示することになります。

まとめ

ここまで、書籍「適時開示実務入門」を元に、適時開示における基本的な実務について解説をしてきました。適時開示は、投資家や株主に対する最初の開示になります。一見、情報開示の方が法律で定められている開示のため、重要に思えるかしれません。

しかし、適時開示は投資家や株主に対して一番最初に行う情報開示であり、上場有価証券の価格形成に大きな影響を与えるため、とても重要です。適時開示する内容によって、開示基準や記載する内容のポイントがありますので、IR担当は、しっかり理解して業務を遂行することが必要です。

参考書籍 「適時開示実務入門」(同文舘出版株式会社)

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