【5分でわかる】書籍「投資家の理解と共感を獲得するIR」のポイント

今回の記事では、書籍「投資家の理解と共感を獲得するIR」をもとに、投資家や株主の理解と共感を得るためのIR活動について解説をしてきます。

IR活動の目的

IRとは、Investor Relationsの略で、企業が株主や投資家に対して財務状況などの投資判断に必要な情報を、投資家や株主に提供していく活動のことを言います。会社の中には、さまざまな職種の仕事がありますが、 IR担当が他の職種と大きく違うところは、常に経営陣と同じ目線で仕事をしなくてはならない点です。このような経験は、他の職種ではできない貴重な経験です。

またIR担当の仕事をする上で必要になってくるのがコミュニケーション能力なのですが、単にコミュニケーション能力が高いだけではなく、相手を「説得」する力も求められます。IR担当は、投資家や株主とさまざまな場でコミュニケーションをとります。その際、良いことだけではなく、厳しい要望や意見を受けることがあります。時には、経営陣と投資家や株主の板挟みになることも少なくありません。特に業績が悪い時期については、辛い思いをすることもあるでしょう。

しかしIR担当は、投資家や株主から受けた厳しい意見や要望を経営陣に報告し、その問題を解消していく必要があります。経営陣と話し合った上で、IR担当が投資家や株主に説明をし納得してもらわなくてはならないのです。

IR担当は経営トップの代弁者である

投資家や株主が投資先として自社を選んでくれるよう、IR担当は投資判断に有益な情報を発信していきます。しかし、投資家や株主に向けて発信する言葉は、経営者と同じでなければなりません。IR担当は、経営者の代弁者でなければならないのです。もし、IR担当が話した内容が経営者と違っていては、当然投資家や株主は困惑します。

では、経営者の代弁者でいるためには、どうしたらいいのか。それは、常に経営陣と近い距離で仕事をするということです。日頃からコミュニケーションをとっていることが重要です。

もちろん、ただコミュニケーションをとればいいといった話ではありません。常に「投資家から自社を投資先に選んでもらうためにはどうしたらいいか」の確認をしながら、投資家や株主に対して自社の成長ストーリーを話せる状態にしておく必要があります。もし赤字の時期なのであれば、今後どうやって黒字に回復していくのかというストーリーを用意し、投資家や株主に納得してもらえるようにしなければなりません。

国内機関投資家について

IR活動はよく「投資家向けの広報活動」と言われることがあります。広報とIRは、いずれもステークホルダーに向けて、情報を適切に発信していく仕事です。広報との明確な違いは、広報がマスコミなどメディア関係者に向けた発信だとすれば、IRは株主や投資家が相手になるという点です。

では、書籍「投資家の理解と共感を獲得するIR」の中でも解説をしている、ステークホルダーの1つである国内投資家について解説をしていきます。

国内機関投資家とは、生命保険会社、損害保険会社、信託銀行、年金など多額の資金を使って株式や債券で運用を行う大口投資家のことをいいます。つまり個人ではなく企業体で大口の投資を行う企業のことをいいます。

例えば投資信託は投資家から集めたお金をひとつの大きな資金としてまとめ、運用の専門家が株式や債券などに投資・運用する商品です。運用成果を投資家の投資額に応じて分配されます。

以前まで証券会社の営業は手数料収入に依存していたこともあり、本来中長期的に保有するべき商品も短期売買の対象になっていました。しかし現在は、銀行やインターネット上での販売が広がっており、証券会社はこれまでアプローチできなかった層へ販売を広めています。そのため株を中期保有する本来の投資信託の姿に戻っています。

また年金については、以前はあまり市場での存在感がありませんでした。なぜなら、国民年金・厚生年金などは、将来の年金給付に備えるため、中・長期の運用が基本でした。安全性重視の投資を行なっていたということです。

しかし現在は年金の仕組みを支えていた団魂世代は今すでに掛け金を払う側ではなく受け取る側になっています。そのため、年金の運用を行う政府は原資・リターン確保のために株主の積極投資を行なっています。年金の運用資産総額は、国内だけで数百兆円にもなり、株式市場に与えるインパクトは大きく存在感もあります。

ただ、この膨大な資金を企業ごとに個別に選別して投資をすることは難しいため、インデックス手法が基本的になります。(インデックス方式:対象とする株価指数と同じ銘柄を同じ比率で組みの投資手法)

つまり投資先を分散させているため、もし運用の足を引っ張る企業があったとしても簡単に売却できない傾向にあります。その結果、議決権行使でリターンの向上を求めてきます。実際には、信託会社や投資顧問会社に受託をしてるので、それらとのコミュニケーションがIR担当にとって重要になってきます。

このように同じ機関投資家でも、運用方法や傾向が異なります。一括りに国内投資家とするのではなく、それぞれの機関投資家について分析し理解を深めることが重要です。

個人投資家について

次に個人投資家についてです。企業にとって、投資家や株主がいかに自社の株を長く持ち続けてくれるかは重要です。昔の日本にはバブル経済に湧き、株価や不動産価格が高騰を続けていた時代がありました。その時代は、ただ銀行にお金を預けているだけで、年率5%増えていくこともありました。

しかし、今の日本は低金利です。将来や老後の資金を考え国からも投資信託などのを推奨している時代です。その結果、個人の証券投資への投資への興味が高まり、個人投資家が増えているのです。つまり個人投資家に向けたIR活動も年々重要度を増しているのです。

また、通常企業が高い利益成長が続いている場合、機関投資家の買いが増えます。その際、機関投資家は受託者等の利害関係に対して、売買について合理的な説明が必要になるのですすが、保有継続についての説明が困難な場合、容赦なく株を売らざるをえないです。つまり機関投資家が増えることにより、株価が一方向にブレやすい傾向があります。

一方、個人投資家の場合は個々で売買の動機は異なります。つまり、個人投資家が多くの市場に参加することで、株式の流動性が増し価格の変動の厳しさが少なくなる傾向にあります。もちろん個人投資家は、機関投資家に比べてしまえば個々の売買金額は大きくありません。しかし多様な考えと投資行動をとることから、資本市場を活性化させ、適正な株価形成に寄与する側面があります。

そのために企業は、いかに自社の知名度を上げて個人の投資家に知ってもらうかは重要なことです。例えば、知名度を上げる1つの手法として、会社の名前と事業のサービス名を統一させている企業もあります。また、広告戦略を活用する企業も少なくありません。

ここまでで、個人投資家へのIR活動の必要性は理解していただけだと思いますが、個人投資家にもそれぞれ特徴があります。今回、書籍「投資家の理解と共感を獲得するIR」では、個人投資家を4つに分類して解説をしています。

①ロイヤル個人投資家

ロイヤル個人投資家とは、企業に対して大きな期待を持っており、長期保有の株主のことを言います。特徴としては、機関投資家と同じような行動をとる人が多く議決権行使にも応じてくれる人が多くいます。また日頃から社会・経済に対する関心も高く、インターネットより印刷物を好み、配当政策においても敏感です。

②さやとり個人投資家

さやとり個人投資家とは、企業に対して大きな期待を持っているが、短期保有の株主のことを言います。さやとり個人投資家は、株価にすごく敏感な傾向があり、企業から発信されるIR情報によってもたらされる株価のボラティリティを出来高を重視します。

③塩漬け個人投資家

塩漬け個人投資家は、企業に対しての期待は少なく、最初は短期保有の株主のことをいいます。個人投資家は、取得株価を下回った場合、株価に対する期待値は下がってしまいますが、塩漬け個人投資家の場合、損切りせずにいつか復活する時まで塩漬けしています傾向があります。結果として長期保有をすることになる場合が多いです。

④たんす個人投資家

たんす個人投資家は、企業に対する期待は小さいですが、長期保有する株主のことを言います。この場合の多くは、自分の意志で取得したのではなく、相続や知人などから頼まれて習得した投資家が多いです。人間関係が関係して取得していることにより、結果的に長期保有になる傾向にあります。

IRイベントにおける戦略

ここでは、 IR活動におけるイベントについて解説をしていきます。IR活動におけるイベントは、投資家や株主に自社のことを理解してもらう貴重な場です。イベントをどのようなスケジュールで運営し、情報をどう提供するかもIR担当の力量が試されます。

また、ただ単に情報を発信する場にするのではなく、あらかじめ開催が決まった時点で、それぞれのイベントの目的やターゲットを明確に準備を進めていく必要があります。投資家や株主が何を知りたいのか、何を求めているのかを汲み取ることが重要です。IR活動におけるイベントは下記のようなものがあります。

決算説明会

決算説明会は各企業が、自発的に開催するものです。経営トップが下記の内容を自ら説明します。

<主な発表内容>
・当該期の決算状況の報告
・当該期のトピックスや中長期計画の達成状況
・当期末決算を受けての今後の経営戦略など

基本的な決算説明会の流れは①開会の辞、②出席者の紹介、③トップによる総括、④決算の説明、⑤通期見通し、⑥質疑応答といった流れになります。

会社説明会

会社説明会は、決算説明会とは違い日時の設定が柔軟にできるため、出席する側も調整しやすいというメリットがあります。会社説明会は、個人投資家向けや証券会社の営業部向けなど目的に合わせて開催をします。

中には大人数に向けて開催をするのではなく、スモールミーティングといい、質疑応答が中心のディスカッション形式で1つの机を囲い、開催する会社説明会もあります。この場合の出席者は、普段からコンタクトをとっているアナリストや、ファンドマネジャーの中から選ぶことが多いです。なぜなら、自社の理解をより深めてもらうことや、正しい戦略を理解した上でレポート作成を行なってもらうためです。

個別面談

セルサイドアナリストとは普段から、電話やメールでコミニュケーションをとっていることが多いですが、リサーチレポートを発行する前になると個別面談を求められることがあります。大型株企業になればなるほど、アナリストが多数いるため、個人面談には長時間を費やすことになります。

海外説明会

機関投資家は、国内だけではなく海外にもたくさん存在します。海外説明会をするしないかは企業によって異なります。する、しないの判断基準は、海外で資金調達をしている、もしくは海外で資金調達する計画があるか、資本政策の中で外国人投資家を積極的に取り込みたいかといった点です。

株主総会

株主総会は会社にとって重要な意思決定を行う会議のことです。「株式会社における意思決定の最高機関」と位置づけられており、株主が参加して経営戦略や人事などの経営における重要な決定事項を決めています。

IRコンテンツについて

IR活動を行う上で、さまざまなコンテンツを活用して投資家や株主に自社の情報を発信します。それぞれのコンテンツすべてが、投資家や株主にとって投資先を判断する「材料」になります。IR活動をする上でのコンテンツは下記のようなものがあります。

・事業報告書
・株主通信
・年次報告書
・決算説明資料
・アニュアルレポート
・CSRレポート
・ニュースリリース
・インターネット動画配信
・IRサイト(英文ホームページ)

このようにたくさんのコンテンツを活用しますが、中でもインターネットを通じて情報を発信する手法は年々需要が高まっています。インターネット上で閲覧することができるIRサイトなどは、以前は今ほど優先度が低く、決算説明資料をアップロードしている程度でした。

しかし、今では誰でもどこからでも閲覧することのできるIRサイトへの関心はとても高まっています。最近では、株主総会をYouTubeなどでリアルタイムで配信するといった企業も少なくありません。

IR担当はIR活動の中心となって、それぞれのコンテンツを常に向上させながら、投資家や株主に有益な情報を伝えていく必要があります。

IR担当者の目標設定について

企業には人事評価があったり、社員個々で目標設定を設定し仕事をしますが、IR担当の場合、目標は大まかに分けて2つあります。

まず1つ目は、ターゲットを明確にして現状を十分に分析した上で、どのような株主構成を実現させるかといったことです。

2つ目は、実際にそれを実現するためにイベントやコンテンツを通して、IR活動をどのように行なっていくかということです。イベントであれば、事前アンケートを踏まえてどう改善していくのか、出席者を増やすためにどのうような戦略を立てるかといったことです。

目標は、経営陣に共有しながら経営目線でIR活動に取り組むことが必要です。目標を明確に立てることによって、それぞれのインベントやコンテンツが向上していき、より投資家や株主に向けて分かりやすく情報を発信することが可能になります。

まとめ

ここまで、書籍「投資家の理解と共感を獲得するIR」をもとに、自社が投資家や株主の理解と共感を獲得するにはどうすればいいのかについて解説をしてきました。

IR担当は、 IR活動を通してさまざまなイベントを開催したり、コンテンツの発信を行います。重要なことは、企業の成長ストーリーを分かりやすく伝え、納得してもらうことです。IR担当としての目標をしっかりと立てた上で、年間のスケジュールをこなしていきましょう。

参考書籍 投資家の理解と共感を獲得するIR (産業編集センター出版)

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